東海大学電気工学会
―― 題字は創設者・松前重義先生
発足30周年に寄せて
東海大学電気工学会 会長 田中慶秋

電気工学会会長 田中慶秋

戦後の日本を復興し、今日の日本経済の発展を見るときに、物づくりを中心とした電気工学の役割は非常に大きかったと思います。この30年は大変な変化と共に、大きな発展が見られ、エネルギー問題等についても、昭和48年オイルショックの問題からエネルギー革命が問われたのもこのころからでした。

30年前は今日のようにパソコンやコンピューター等情報関係がこんなに発展するとは思われませんでしたし、携帯電話などもこれだけ世界中に普及するとは考えられませんでした。この普及のひとつには半導体をはじめ、電子関係の開発と併せて小型化に取り組んだことが大きな原因であると考えられます。

東海大学も卒業生が今や30万人になろうとしております。松前重義前総長は建学の精神を説き、現代文明論を東海大学の建学の精神として、今日まで脈々と伝えられております。私達は電気工学を学び、今日のあらゆる分野にその価値や技術というものが伝承されております。その多くは町工場の技術から始まり宇宙衛星の先端技術までその視野は広がっております。今日産学協同が知的財産をはじめとして、よく活字で見られますが東海大学は昭和30年来これに取り組んでこられ、その先見性は高く評価されております。今や私学における知的財産の取り組みは他の大学を抜き羨望の的になっております。

私達は、改めてこの30年間の世の中の流れを見た時に、もう一度原点に戻り私学としての役割、私学でなければ出来ないこと等をしっかりと見極める事が必要だと思います。

日本は、少子化が進み今や出生率1・25まで下がってしまった現在、日本が未来に羽ばたくためには、この少子化問題の解決が急務であり、これはあらゆるところに影響が出てきます。日本が人口減となった今、国が最優先で取り組まなければならない問題は、少子化問題と環境問題に関わる多くの懸案にあります。改めて、物を中心とした時代から人間を大切にする時代を作らなければならないという使命を感じさせます。

その原点は教育にあると思います。戦後60年経った今日、日本の教育は国公立の役割から独立行政法人としての学校経営、即ち学校の特徴を生かす教育の在り方が求められております。私学の役割は、改めて高く評価され、東海大学は現在その先導的役割を果たしていると思います。

30年前の東海大学は、理工系を中心とした専門大学でありましたが、今日では総合大学として医学部までが設立されていることは、他の大学にはない先見性があったといえます。

私は昭和32年に東海大学に入学しました。当時の全生徒数は500人足らずでしたが、松前前総長から直接授業を受けることも出来、今日の情報通信発展の基礎となる無装荷ケーブルの開発の発明者であるということを聞き感動したものです。FM放送の今日があるのも東海大学のとりくみが最初でした。

私は、東海大学の柔道部を作り、本学は今日の世界的指導者山下教授をはじめ井上康生選手等多くの人材を世に送り出しています。これは前総長が文武両道を唱えた東海大学建学の精神のひとつでもあります。オリンピックで山下選手の金メダルをはじめ数々のメダリストを出し、野球では巨人の原監督に代表されるように各球団で活躍されており、今や国内外で東海大学の各界での活躍が期待されております。またロシアのプーチン大統領は山下教授を盟友として親交を深め、民際外交の役割にも大きく貢献されております。

私達は東海大学の建学の精神というものが、時代がどう移り変わろうとも大変素晴らしい目標であろうと思います。そして東海大学は未来に力強く羽ばたく大学であると信じております。今の日本は国家目標を失いつつあります。羅針盤が迷走を続けようとしているとき、しっかりとした目標と、しっかりとした戦略が必要なのです。戦後60年、私達の先輩は世界一の経済を目標に掲げ、努力をして参りました。一方においては、日本の官僚も高く評価されておりましたが、今や官僚はセクショナリズムになり自分のことだけを考えるようになっています。このことが今日の羅針盤の迷走につながっていると思います。

時代は官から民へという。これは大学においても同じ事であります。私達は改めて元気な日本を作る意味で私学の力、即ち建学の精神こそが今求められていると思います。

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